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2025.04.09

「組手争いのスピードで外国勢が優位に」 元柔道日本女子?生田コーチがパリオリンピック回顧 本学コーチング研究誌「櫂(かい)」から

 大阪体育大学スポーツ科学部のスポーツ教育コースでは、コーチング研究誌「櫂(かい)」を年1回発刊している。スポーツ教育コースには、ハンドボール女子日本代表監督など国際舞台を経験し、国内で活躍する多くのクラブ指導者や研究者が所属する。「櫂」は1996年から年1回発刊。指導者がコーチング研究の一端について寄稿し、国内外のトップで活躍した学生アスリートのリポートが掲載されている。
 2025年春に発刊された「櫂」第27号から、教員や学生の寄稿、リポートを順次掲載していく。

 第1回はパリオリンピックで柔道日本代表の女子コーチを務めた柔道部男子監督?生田秀和准教授(柔道?コーチング学)。

パリオリンピック?柔道女子コーチ
柔道部男子監督 生田秀和

生田秀和准教授

1. はじめに
 パリオリンピック帯同について触れる前に、まずは私の競技?指導歴について簡単にご紹介させていただきます。私の専門は柔道で、大学卒業後は実業団(ALSOK)に所属し、34歳まで競技に専念していました。競技引退後は、所属企業の採用部門に異動し、通常の会社員生活を送っておりました。会社員としての生活にも徐々に慣れた頃、ありがたいことに全日本柔道連盟からナショナルコーチとしての打診を受け、会社員とコーチ業を両立することとなりました。2013年から2021年までは男子ジュニアコーチとして、また2021年から2024年までは女子シニアコーチとして、計10年以上にわたり全日本の一員として活動させていただいたことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。この間、前職のALSOKおよび現在の本学からの理解とサポートをいただいたおかげで、無事に活動を続けることができました。心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

2. 試合前日までの調整練習
 柔道日本チームの調整練習は、ハイパフォーマンススポーツセンター(以下HPSC)で行われました。選手村からはシャトルバスで5~10分、コーチやスタッフが宿泊する村外ホテルからは地下鉄を乗り継いで40分程度の距離に位置していました。HPSCには他競技の日本人選手も利用しており、各競技専用のトレーニング施設、共有のトレーニングスペース、ケア施設(交代浴やサウナ)、食堂などが整備されており、選手たちは十分に調整を行うことができました。外は連日30度を超える猛暑でしたが、室内は大型クーラーで快適に過ごすことができました。
 代表選手には、練習パートナーとして1~2名を選出し、試合前日までに組手や立ち技、固め技を入念に確認しました。柔道競技の初日が始まると、審判の罰則を与えるスピードにも注視しながら、各選手が調整に臨んでいました。

3. 本大会の総評
 2024年パリにて開催された第33回オリンピック柔道競技は、7月27日から8日間にわたりCHAMP DE MARS ARENAで実施されました。日本女子代表は全7階級に選手を派遣し、金メダル1個、銅メダル1個の獲得にとどまり、厳しい結果となりました。この成績の背景には複数の要因が考えられますが、特に注目すべきは各国選手の国際大会経験の豊富さです。海外選手たちは本大会に向けて数多くの実戦を積んでおり、それが試合中の柔軟な対応力や多彩な戦術として表れていた印象です。一方、日本選手もフィジカルの強化に努めてきたものの、試合では力負けする場面が見受けられました。特に、組み手争いにおけるスピードや、相手の攻撃を断ち切る力といった点では、海外勢の優位性が際立っていたように思われます。今大会では、金メダルは7つの異なる国に分かれ、メダル獲得国も19カ国にのぼるなど、世界全体での競技力の底上げが顕著に表れた大会となりました。決勝に進出した選手の顔ぶれを見ると、第1シードの選手が4名、第2シードが6名を占めており、大きな波乱は少なく、国際大会での実績が着実に結果国際大会での実績が着実に結果へと結びついていることが示されました。とりわけ、彼らの勝負所での粘り強さや、メンタル面の成長は共通した特徴として見られました。今後、2028年のロサンゼルス?オリンピックに向けては、各階級での選手層の強化が急務となります。特に、若手選手の積極的な海外派遣を通じて、国際経験の蓄積と戦術面での引き出しを増やしていくことが重要です。

コーチング研究誌「櫂」

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